自作ヘッドホンアンプ

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二つのノブで「音量(入力の振幅)」と「中段のゲイン」を調整します。

二つのノブで「音量(入力の振幅)」と「中段のゲイン」を調整します。

紹介

半年ほど前に作ったステレオ拡張回路付き、ヘッドホンアンプの紹介です。ここで紹介する「ステレオ拡張」とは難しそうですが、実際は非常に簡単で右の信号と左の信号の差を増幅するだけの話です。

 

「ステレオ拡張」の話

ステレオの音声の場合、音声信号は左と右にあわせて二つあります。通常、左の信号はLであらわされ、右の信号はRとしてあらわされます。しかし、少し角度を変えてみてみれば、LとRの信号の共通部分のCという信号も存在することがわかります。

ここでは左の信号のみに含まれる信号をL、右にのみ含まれる信号をRとします。

よって、右の信号は(L+C)としてあらわされ、右の信号は(R+C)としてあらわせます。曲によって違いますが、一般的にCには歌声(ボーカル)がのせられ、LやRには主にインストラメンタルがのせられます。

モノの音声の場合、LとRの信号の違いは存在せず、両方とも「C」です。しかし、ステレオからモノの音声を合成する場合、右と左、両方ともに、一般的に「0.5L+C+0.5R」の音声が送られます。

今回作ったステレオ拡張回路では前段の差動増幅回路で「(L+C)-(R+C)=L-R」と「(R+C)-(L+C)=R-L」の作動増幅を行い、いったん「C」の信号を排除します。次にこの信号をゲイン(A)が調整可能な反転増幅回路に送り、-A(L-R)と-A(R-L)の信号を出します。最後にこれらの信号をそれぞれ右の入力信号(R+C)と左入力信号(L+C)に加算し、出力波を合成します。

こうすると出力波はこのような式であらわされます。

片方:A(R-L)-L-C

もう片方:A(L-R)-R-C

出力波の構成は中段の反転増幅のゲインが大きく関係していて、それによって、どれだけステレオを「拡張」したいかが調整できます。また、ゲインが0のときは終段の加算増幅回路は-(L+C)+0と-(R+C)+0の加算しかしないため、普通のヘッドホンアンプとして使用できます(信号は反転されますが、聞こえ方は変わらないです)。

Aを調整した場合の出力波は以下のようになります。

 A= 出力波1 出力波2
A A(R-L)-L-C A(L-R)-R-C
0 -(L+C) -(R+C)
0.5 0.5R-1.5L-C 0.5L-1.5R-C
1 R-2L-C L-2R-C
2 2R-3L-C 2L-3R-C
5 5R-6L-C 5L-6R-C

 

仮想グラウンド

オペアンプは大体、両電源で稼働するため、電池では「仮想グラウンド」を作る必要があります。今回、「仮想グラウンド」はカレントミラー回路というトランジスタで構成された回路で作りました。つかったトランジスタは日本で簡単に手に入る2SC1815とコンプリメンタリの2SA1015です。9V電池で稼働する場合、+電圧は+4.5V、-電圧は-4.5Vとなります。トランジスタの個体差により、グラウンド電圧が実際に「0V」にならない可能性がありますのであらかじめブレッドボードでテストしてから基盤に実装しました。また、入力につられて、グラウンド電圧が揺らぐことがありますが、個人的にはあまり差が感じられなかったので、ある程度の「揺らぎ」は許容しています。

 

蓋を外した状態のヘッドホンアンプ

蓋を外した状態のヘッドホンアンプ

使用するオペアンプ

ICソケットを使用しているため、オペアンプは簡単に交換できるようになっています。最初は本当にオペアンプを変えただけで音が変わるか疑っていたんですけど、実際にオペアンプを変えて音の変化を感じられたので、色々試してみました。

どれか一つがいいというわけではなく、組み合わせが重要だと感じました。結局最後は初段(差動増幅)にOP275、中段(反転増幅)にOPA2134PAと終段(加算増幅)にNE5532の計3種を使うことにしました。

普通にヘッドホンアンプとして、一つのICオペアンプのみを通して聴く場合、OPA2134は湿っぽすぎて、OP275はシャリシャリしすぎている気がしました。なので、ニュートラルだと感じたNE5532を終段に使うことにしました。あくまでも個人的な意見なので、参考程度にしてください。

 

ケース

ケースは近所の百円ショップで買いました。穴あけもさほど面倒ではなく、電池交換やオペアンプ交換の際、蓋が取り外せるのがいいですね。

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